ドクターコラム

アンチエイジング(若返り)

古今東西人間のゆめである不老長寿
私達は何故、永遠の若さと命を夢見るのでしょうか?
日本では養老の滝、欧米では吸血鬼伝説
健康雑誌やテレビでも、様々な情報が提供されてきています。

社会の高齢化が進み、facial rejuvenation(顔の若返り)治療の重要性は今後ますます大きくなることに疑いの余地はないでしょう。
ニーズが高まるとともに、これまでエステサロンや化粧品で若返りに気を使ってきた人の中にも美容医療による若返りを試みる人が増えてきたように思われます。

特に、近年の低出力レーザーや光治療、ケミカルピーリングなどへの関心の高さは、より負担の少ない治療法に対する期待と要求の高さを反映しています。
Facial rejuvenationの治療には様々な手段が用いられますが、日本では特に一つの手段で様々なニーズを満たそうとする傾向が強いように思われます。

それぞれの手段は固有の目的があり、治療対象も各々異なっていますので、いくつかの治療方法を組み合わせて総合的な治療を行うことが本来は理想的です。
例えば、フェイスリフトを行っても、皮膚の物理的緊張は改善されるが、皮膚自体の加齢変化や紫外線による光老化は何ら改善されません。

医師である私たちは、出来るだけ小さな負担(コスト、時間、ダウンタイムなど)で 確実な効果をあげることで、医療(科学)としての若返りを目指していきたいと思っています。

 

外科的rejuvenation治療

治療効果だけを考えた場合、重力による軟部組織の下垂や余分な皮膚の皺を取ることが一番効果があります。頬部、頚部のlifting、中顔面、前額のliftingに加え、上下眼瞼の皺取り術もその若返り効果は非常に大きいと思われます。肥満した患者さんには顔面、頚部の脂肪吸引をあわせて行うことも有効な場合があります。

逆に高齢者では脂肪注入によって、老化して現れる軟部組織の萎縮を是正し、皮膚のタルミをとる手術も、下眼瞼、頬部、側頭部などにしばしば行われます。患者の希望や顔貌の特徴に応じた複合術式の選択が必要です。

皮膚のリフティングに加えて、内視鏡を用いたリフティングも広く行われるようになってきています。手術後の後戻りを小さくするための工夫、欧米人との骨格の異なる東洋人にあった術式の工夫、効果の及びにくい顔面中心部を改善する工夫などについてもまだ検討の余地はあると思われます。男性患者へのliftingの適応という課題も残されています。

内視鏡や脂肪注入による若返り手術、眼瞼では経結膜アプローチによる手術などは、術後瘢痕の面からは非常に優れており、今後手術法の改良により大きな効果が安定して得られるようになれば、さらに普及していくことになるでしょう。
劇的な効果を望むのであれば 、コストや回復するまでの期間(ダウンタイム)などを考慮しても、他で変えられるものではありません。

Skin Resurfacing (皮膚の若返り)

Skin resurfacingには大きく分けて次の3つあります。

  1. レーザーによる方法(laser resurfacing, laserabrasion)
  2. 化学薬品を用いる方法(chemical peeling, chemabrasion)
  3. 機械的な損傷を加える方法(mechanical peeling, dermabrasion)

皺の改善を目的とするresurfacingでは、どの方法も真皮に何らかの障害を加えることにより2次的にコラーゲンを誘導して(創傷治癒)、シワの改善を図るのが共通したコンセプトです。

レーザーを用いるresurfacingの代表的なものは炭酸ガスレーザーであり、術者の技術によらず安定したresurfacingが行えます。真皮に熱変性を加えることで真皮の収縮が期待できるという利点から、欧米では90年代に入り広く普及し、皮膚削り術にとって代わるようになりました。治療効果の面からは、海外では非常に評価が高い治療法です。しかし、私達日本人では東洋人特有の術後の色素沈着や遷延する紅斑の問題から、あまり普及していません。
このような方法は 浸襲のあるレーザーに対して、最近では浸襲のないレーザーの照射で若返りを試みる装置がいくつか出てきています。一つは、通常よりも長い波長1320nmのNd:YAGレーザー(ナチュラレーズ、クールタッチなど)や、クーリング装置を装備したショートパルス色素レーザー(Nライトなど)である。

ほかには、レーザーではないが、560nmから1200nmの幅を持った強い光を照射するフラッシュランプ(IPL、フォトフェイシャルなど)も表皮に障害を与えず、真皮乳頭層のコラーゲン新生を促すとして、若返り目的に使用されています。これらはいずれも複数回の照射を前提とし、表皮をクーリングで保護しながら真皮のみに熱変性を加えようと試みている点では共通しています。
効果は非常に小さいが、副作用がなく回復期間がないという利点があります。

一方、メラニンをターゲットとするQスイッチルビー、アレキサンドライトなどのレーザーは、老人性色素斑に広く使用されています。

化学薬品を使用する方法では、レチノイン酸、ハイドロキノンを用いたシミの治療に加えて、長期的にレチノイン酸を使用することにより、小皺の改善も期待することができます。レチノイン酸治療も改良が加えられ、広い範囲の色素沈着病変に大きな効果が得られるようになりました。

AHAやサリチル酸などによるケミカルピーリングの反復治療も行われるが、TCAやフェーノルを用いた深いケミカルピーリングの方が明らかに効果が高く、海外に限れば多くの報告がなされているが、レーザーや皮膚削り術と比較した場合、ピーリングの深さがわかりにくいため、また場所ムラを生じることがあるため、熟練するのに経験を要するという問題点があります。
しかし、必要経費が安い、広範囲を短時間で行える、blendingでdemarcationをごまかすことができる、頚部にも行える、などの利点もあります。さらに深いピーリングを行うには、TCAやフェノール、もしくは2種以上のピーリングの組み合わせを行うことが必要になりますが、静脈麻酔も必要になります。

こうした深いピーリングは、わが国では色素沈着、創傷治癒や紅斑の問題などの課題も多く残されており、まだ広く行われるには至っていません。現状では、日本人に対しては浅いピーリングが一般的であり、表皮のムコ多糖類の増加やしみ、くすみの治療は可能であっても、真皮のremodellingを誘導して本格的に皺を改善することは不可能です。

機械的なピーリングとしては、電動グラインダーを用いる従来からのdermabrasionに加え、細かい粒子を吹き付け吸引するMicrodermabrasionがあります。Dermabrasionは古くから行われているが、凹凸の強い変形(例えばニキビ痕や上口唇の縦ジワなど)には最も効果が期待できると言えるでしょう。しかし、回復期間が必要で、やはり色素沈着や脱色素などの問題も伴う。Microdermabrasionは従来は角質を取る治療であり、ケミカルピーリングで言えば、弱いAHAピーリングに相当していたが、近年は多くの製品が開発され、強力なものでは表皮全体をも削ることができるようになりました。

角質剥離治療が、non-ablative照射が、またsuperficial peelingが表皮、真皮に対してどの程度まで効果を与えうるかまだはっきり分かっておらず、今後それぞれの作用メカニズムを基礎レベルの研究によってより詳細に明らかしていく必要があるでしょう。

その他の治療

表情皺や笑い皺などにはボツリヌス毒素(ボトックス)の局注が優れています。筋緊張が強くて皺のできる患者ではコラーゲンなどの注入剤を入れても、筋緊張のために早い時期に再び深い皺が形成されてしまいます。前額部の横皺、眉間の縦皺、カラスの足跡などには劇的な効果があります。

指摘されている問題点は、周囲に拡散することによる目的外の麻痺誘発の他に、何回か使用した後に抗体ができることによる耐性の問題(効果がなくなる)などがあります。

静止時の眉間や口周囲の皺には、ウシから採取したアテロコラーゲン注入剤(わが国でも認可済)が広く利用されていますが、アテロコラーゲンの欠点であるアレルギーの問題(テストが必要、約3%の患者に異物反応、アレルギー反応を起こす)、吸収されて消失するという問題などを解決するものとして、ヒアルロン酸が使用されていますが効果はボトックス同様永久的ではありません。