皮膚科全般

主婦(手)湿疹

水仕事は、手の血管を収縮させます。皮脂膜や角層(バリア)の破壊は水中で手を擦りあわせるだけでもおこりますが、水より湯、湯より石鹸の使用、石鹸よりも洗剤の使用、洗剤よりも漂白剤の使用によって増強されます。それらに加え、様々な刺激物質が本性を増悪させます。

手荒れがおきるメカニズムは以下の通りです。

手指の皮膚は皮脂腺から分泌された皮脂と汗腺から分泌された水分が乳化しクリーム状となり、皮脂膜として皮膚を保護しています。

水仕事によりこの皮脂膜がはがされ、その下の角質の水分が蒸発してしまい、乾燥してかさかさにな ります。
頻回の手洗いにより回復しかけた皮脂膜が再び除去されてしまいます。
このように水分を失い柔軟性を失った皮膚は乾燥状態から落屑、角質の硬化、亀裂、紅斑、痒みといっ た症状がでてきます。これが手荒れです。

特に、小さいお子さんのいるお母さんは仕事量が多いので、手が荒れやすくなります。お産で実家に帰っているときは良くなっている方が殆どです。良い状態のときもビニール手袋をそて洗剤を素手で扱わないようにしましょう。中にゴムアレルギーの方もありますが、稀です。
また、最近は男性も家事をする方が増えて主夫手湿疹の方もみられます。

予防

日常生活のおいて手あれを防ぐには手の脂分を取りすぎないことと、機械的刺激を避けることが重要です。

手の脂分がとれすぎる最大の原因は食器洗いの洗剤です。
食器洗いの際に手に持ったスポンジに 洗剤の原液をつけて洗うのは厳禁です。
この方法では高濃度(10~20%)の洗剤により、瞬く間に 手の脂分も取れてしまいます。
洗い桶に冷たい水を張り、洗剤を溶かし(1%未満)、この中で洗うのが正しい洗い方です。
お湯も手の脂を溶かすので、冷たい水の方が良い。
手荒れが始まるとゴム手袋を使用する人が多いが、これも注意が必要です。
ゴムは古くなると硬化し、かぶれやすくなるからです。

当初手のひら側のみだけだった手荒れが手背におよんで来たら、ゴムのかぶれを考える必要があります。
安全なのはナース用のディスポのポリエステルの手袋で、かぶれる危険性はほとんどありません。
破れるたびに使い捨てとし、どんどん新しいものを使用するのがベストです。
または、綿性の布の手袋をしたまま、ゴム手袋・ポリエステル手袋をはめてもよいと思います。

ただ、面倒だ、食器を壊す、汚れが落ちたかどうかわからない、仕事にならないなどの理由でアドバイスをなかなか聞いてもらえないのが現実です。これが嫌なら変わりに家事をやってくれる(お手伝いさん、夫、実家のお母さん)人をみつけるしかないでしょう。

治療

手荒れがおきてしまったら、一時家事を放棄するのが一番です。お産で実家に帰るときれいになったという経験のあるかたも多いと思います。きれいな手になったら、予防に心掛けて下さい。

手荒れが起きてしまった場合はこれを治療しながら仕事を続けざるを得ない。 以下にその治療法を示します。

ウェットラップ法

あまり知られていない意外な方法として、ウェットラップ法がある。
これは手洗い後、まだ手がびしょびしょに濡れたまま外用薬(ワセリン系)を塗り、その後であまった水分を拭き取るのである。
この方法は適度の水分を角質に与え、乾燥状態を良く改善する。

この方法は一種の密封療法になるので悪くはない。
この際に手袋そのものにかぶれぬように注意。
また蒸れすぎて悪化せぬよう注意を要する。

爪周囲の手入れ

爪の周囲の荒れも問題になります。
爪は爪床という皮膚の上に乗って一日平均0.1mm先端に向かって 伸びています。
爪根から爪先まで完全に再生するのに健康な人で最低4~5ヶ月、高齢者で8~9ヶ月かかります。
爪に悪影響するものとして、栄養分の不足、洗剤や薬品、病気、精神的要因、間違ったケア、遺伝 的素質、細菌感染、老化現象など。

爪の健康度は質、ツヤ、弾力でみます。 小爪(爪半月)の大きさは遺伝的要素が大きく、健康度とは関係ないようです。
これは爪母で作られてまもない部分で、水分を多く含んでいて白く見えます。ワセリンなどの外用。ひどい時には、ステロイド外用。水仕事を減らすために、家事の分担や食器洗機の購入など考えるのもいいかもしれません。

保湿外用薬

乾燥、角質の硬化には5%サリチル酸ワセリン軟膏があります。保湿が目的ですので、常に手指に軟膏が付着していなければ意味がありません。そのためには外用剤を常に携行し、皮膚が乾燥するたびに塗る必要です。これは手の表面に脂の膜を作り水分を保ち、角質を柔らかくします。しかしべたつくので昼間は嫌だという方が多いです。

そこで、べたつかない保湿剤として尿素軟膏(パスタロンS)、ヘパリン類似物質(ヒルドイドソフト、ローション、ビーソフテン)、ビタミンA油(ザーネ軟膏)等があります。
ただし、べたつく物程良く効くと思って間違いないでしょう。
また、外用剤使用のポイントはいつも薬が皮膚についている状態を保つということです。

ステロイド剤

紅斑や痒みを伴う場合は炎症を抑えるためステロイド外用剤が必要です。

亀裂

手指に亀裂を生じたり、爪の横がささくれた場合カットバンを貼るのは、これは百害あって一利なしです。過剰の水分が閉じ込められ、角質はふやけ、その結果更なる皮脂膜の脱落を来し、手荒れを確実に悪化させます。

亀裂に対するオーソドックスな治療は5%サリチル酸ワセリン軟膏やステロイド剤を薄く塗った上 から、リント布に厚く伸ばした亜鉛華軟膏(サトウザルベ)を貼ることです。最近は布に伸ばした亜鉛華軟膏の既製品もあります。

また密封療法としてステロイド軟膏を塗布し、サランラップで密封する方法もあります。
簡略法として、ステロイド含有テープ剤(ドレニゾンテープ等)を楕円形に切り、放射状に切れ目を入れて(この操作をしないと剥がれやすい)乾燥させた亀裂部に貼ります。


進行性指掌角皮症

思春期以後の若い女性の利き手の2、3指の末節より生じる。炎症性角化症で、主婦湿疹とは別の疾患として扱ってきましたが、最近では、主婦湿疹に含まれる疾患として考えられています。